息子が所属する、パークシティスキーチーム(PCST)U16 のコーチの一人、スイス人のフレディーはよく選手に、“Time derives from skills”と言います。「タイムは技術から来るんだよ」ってことでしょう。
PCSTでは練習中頻繁にタイム計測を行いますが、そのとき、タイムのことばかり気になり自分の課題となる技術、或いは、自分の持っている技術の発揮を忘れてしまっている選手がいるのです。そのような選手に、この言葉をかけているのだと思います。同じニュアンスのことを、私も常々、息子に言っています。
しかし、タイムを導き出す技術とは何でしょう。適切な外向傾、適切な膝の上下動、適切な荷重バランス(乗る位置)などがまず体系(ここから枝分かれして細かい技術となっていく)としてあげられるでしょう。そして、これらに関する技術が取得できるよう、コーチは指導を行うのです。
しかし、もう一歩踏み込んで考えると、これら技術は、何のための技術なのでしょうか。コーチは、何のために「外向傾をとれ」、「スキーの真上に乗れ」などと指導するのでしょうか。
そもそも、アルペンスキーのタイムに直結する技術とは何なのでしょう。
どのような技術にも、利用目的があります。求める技術の目的を理解しておくことは、技術の習得・発展のためにも大切なことだと考えます。
私は、アルペンスキー(競技)に求められる究極の目標はこれにつきると思います:
「ターン弧を限りなく小さくする」
スキーというアクティビティをトータルで考えると、スピードをコントロールする技術など他に重要なこともあるでしょう。しかしこと、アルペン競技においてタイムを導き出す技術ということを考えると、すべてはここに行き着くと思います。適切な外向傾、適切な膝の上下動、適切な荷重バランス等々すべての技術は、ターン弧を限りなく小さくするためのものなのです。すべての技術はこの理解からスタートするべきであること考えます。
ターン弧の大きさがタイムに結びつくのはなぜでしょうか。ゲートの中ではすべてのターンで完全なカービングができるわけではないので、別の視点から考えてみましょう。
イメージ的には、タイム差は、ターニングポイント(ニュートラルポジション、ターンの始まり)とターニングポイント(ニュートラルポジション、ターンの終わり)のスキーのトップの位置を直線で結び、その直線を底辺として、スキーのテールが通った奇跡の内側の面積、の違いなのではないかと思います。ターン弧が小さい、或いは、テールの振り出し幅の小さい選手はこの面積が小さくなり、そうでない選手は、大きくなると考えます。
つまり、スキーが雪面をなぞる面積、これがタイム差だと考えます(実際はこれにターニングポイントまでの距離が考慮されなければなりません)。別の言い方をすると、タイム短縮のためには、スタートからゴールまでの中で、カービングターンの比率をできる限り多くするのです。
まとめると:
タイム差=スキーが雪面をなぞる量ê
スキーが雪面をなぞる量を少なくする=カービングターンの比率を増やすê
カービングターンの比率を増やす=ターン弧を小さくする
「当たり前のこと」と思われるかもしれませんが、このことを踏まえて、つぎは、どのようにターン弧を小さくするのかを、考えてみたいと思います。